2019年6月6日

福島県庁 報道関係県政記者室 御中
報道関係者 各位

                    311甲状腺がん家族の会
                    事務局 武本

   要望書の提出について
 平素は、当会の活動にご理解・ご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
 さて、去る6月3日に開催されました「第13回甲状腺検査評価部会」におい
て、福島の子どもたちの甲状腺がんと被ばくの関連性を否定する発表が行われま
した。そこで、当事者団体である311甲状腺がん家族の会は、福島県知事、県
民健康調査課そして県民健康調査検討委員会宛に、別紙の要望書を送付いたしま
したので、ご報告申し上げます。

<ここから要望書>
                       2019年6月6日

福島県
知事 内堀 雅雄 様
福島県保健福祉部県民健康調査課 御中
県民健康調査検討委員会 御中

                       311甲状腺がん家族の会

  第13回甲状腺検査評価部会における被ばくの影響の否定について(要望)

 去る6月3日に開催の標記会議で、県民健康調査・甲状腺検査のうち、「本格
検査・1回目」で発見された甲状腺がんについて、福島原発事故による被ばくと
の関連性を否定する発表がなされました。
 基礎データ収集を主たる目的とした「先行検査(2011~2013年実施)」
の後に行われた「本格検査・1回目(2014~2015年実施)」で、新たに
52人のがんが確定し、19人にその疑いがあるとされています。
 その結果、これまで合わせて168人のがんが確定し、43人がその疑いとさ
れ、手術所見などから多数のリンパ節転移や被膜外浸潤のみならず、遠隔臓器へ
の転移や再発までも報告されています。
 しかし、喫緊の課題である甲状腺検査枠外で甲状腺がんと確定した人数の正確
な把握は、未だその途にあります。さらに、内部被ばく線量についてほとんど検
討がなされておらず、外部被ばくについても実測値は乏しく、大きな不確実性が
存在します。併せて、評価部会でのデータの取り扱いについても、一部の専門家
から疑義が出されています。
 そこで、当事者団体である「311甲状腺がん家族の会」は、別紙の事項につ
いて要望します。なお、当会の患者は既に手術を施行されていることから、手術
の妥当性などを、患者やその家族が自ら評価・判断するうえで、極めて重要な要
望事項と考えていますことを申し添えます。

1 県民健康調査の甲状腺検査枠外で甲状腺がんと確定された人数や、被ばく線
量すら十分に把握されていない現状で、福島原発事故による被ばくの影響を否定
することは、あまりにも早計です。
 そこで、あらゆる予断を排除し、福島原発事故による健康被害について専門家
としての調査・研究の継続を求めます。

2 これまでの甲状腺検査評価部会におけるデータの取り扱いについて、一部の
専門家から、次の(1)~(3)のような疑義が出されています。すなわち、
(1)資料図の信頼区間が、データ量から考えて小さすぎ、また、有意差で単純に
結論付けることの問題が国際的に指摘されている。
(2)これまで部会で用いられてきた4地域区分や、学術論文で用いられた先行検
査分析の際の地域区分を用いておらず、連続性が失われている。
(3)個人の推定被ばく線量データがあるならば、個人線量に基づいて比較すれば
よいにも関わらず、新たな地域区分を導入し地域比較に終始している。
 ご存知のように、宮崎・早野論文では不適切なデータ処理が指摘されるなど、
不透明なデータを根拠とすることは、調査・研究の信頼性を根本から毀損します。
これらの疑義について明らかにする見地から、以下A~Cを要望します。
A データおよび計算方法の公開
B 従来の4地域および先行検査分析の際に用いた地域区分を用いた比
C 個人線量に基づいた比較

3 一般に、小児期の甲状腺がんの原因の第一は放射線被ばくとされています。
仮に、福島で発見されている小児甲状腺がんが、福島原発事故による放射線被ば
くの影響でないとすると、放射線被ばく以外の原因による甲状腺がんの多発とい
うことになります。チェルノブイリでの、非被ばく・低被ばく群の子どもに対す
る甲状腺エコー検査では、甲状腺がんは発見されていません。
 そこで、福島の子どもの甲状腺がんの多発について、どのような原因が考えら
れるのか、具体的な議論を要望します。

4 第11回甲状腺検査評価部会において、子どもの甲状腺がんの治療が遅れた際
のリスクについて、吉田委員や南谷委員らの指摘がありました。また、福島県の
子どもの甲状腺がんでは、手術所見などから、多数のリンパ節転移や被膜外浸潤
のみならず、遠隔臓器への転移や再発までも報告されています。そのような中で、
鈴木部会長は、他都道府県で同様の検査を実施すると、福島県と類似の結果が得
られることを予見しています。
 さらに、20~35年後に発見されるかも知れない甲状腺がんを、いわば「早
期発見」しての手術と説明しながら、その一方で「過剰診療」については排除で
きないとの見解を示しています。
 そこで、このような状況下における検査や手術の妥当性について、実際の病態
に基づいた議論を要望します。

・なお、本要望書についてのお問い合わせ・ご回答は、上記連絡先(担当者・武
本)までお願い申し上げます。